青森県五所川原市金木町で愛され続けた「笹餅」。
その作り手として知られる桑田ミサオさんは、そのおいしさと真心で地元だけでなく、津軽の文化を全国に伝えた名人でした。
手がけた笹餅は、素朴ながらも奥深い味わいがあり、多くの人に愛されてきました。
しかし、2023年、96歳という高齢を理由に販売を終了。
その後、その味と技術を受け継ぐのが、姪の小嶋美子さんです。
今回は、桑田ミサオさんのこれまでの歩みと、美子さんが受け継いだ笹餅の魅力について、たっぷりご紹介します。
桑田ミサオのプロフィール
昨日のNHK番組『プロフェッショナル』は凄すぎた。
93歳にして現役の職人桑田ミサオさん。最初から最後まで金言だらけで本当にかっこいい方だわ。
この方こそ圧倒的なプロフェッショナルだわ。#プロフェッショナル仕事の流儀 #桑田ミサオ pic.twitter.com/79sPORg8hR— 🐉丸山 麿🐉(maro maruyama) (@maro_fashion358) June 2, 2020
桑田ミサオさんは1927年、青森県の金木町で生まれました。
若い頃から働き者で、農場の季節労働や保育所の用務員として地域に貢献してきました。
その後、60歳を迎えて退職するとき、「何か新しいことを始めたい」と思い立ちました。
そして選んだのが、幼い頃から親しんできた「笹餅作り」だったのです。
笹餅は、青森県津軽地方で昔から親しまれている和菓子。
もち米を蒸し、よもぎを混ぜて作った生地を笹の葉で包み込むことで、風味豊かな一品に仕上がります。
ミサオさんはこの笹餅を本格的に作り始め、地域のスーパーや津軽鉄道の車内で販売。
地元の人々にとって、彼女の笹餅は欠かせない存在となりました。
笹の葉は自ら山に入り採取し、こしあんも一から手作りするという徹底ぶり。
添加物を使わない、自然な味わいへのこだわりが評価され、年間約5万個の笹餅を作り続けました。
「私の笹餅を楽しみにしてくれる人がいる。それが嬉しくて作り続けてきた」と語るミサオさんの言葉からも、仕事への情熱が伝わってきます。
「96歳での引退」
2023年、桑田ミサオさんは96歳の誕生日を迎えました。
それまで現役で笹餅作りを続けてきましたが、高齢のため販売を終了することを決断します。
この知らせは地元や彼女の笹餅ファンにとって、大きな驚きと同時に寂しさをもたらしました。
「引退は少し寂しいけれど、体力的に限界を感じることもある。今まで支えてくれた皆さんに感謝したい」とミサオさんは語ります。
この発表の後、彼女の笹餅作りにかける情熱とその味が消えてしまうことを惜しむ声が多く聞かれました。
しかし、この伝統を途絶えさせてはいけないと立ち上がったのが、彼女の姪である小嶋美子さんでした。
桑田ミサオの後継者
小嶋美子さんは、約8年前から桑田ミサオさんのもとで笹餅作りを学び始めました。
「最初は単なる手伝いでしたが、おばあちゃんの姿を見ているうちに、この味を守りたいと思うようになりました」と語る美子さん。
笹の葉の扱い方や生地のこね方、あんこの練り方など、すべてミサオさんの手本を見ながら学びました。
そして、2023年11月、ミサオさんの希望を受けて、美子さんの作る笹餅が地元のスーパーで販売を開始しました。
販売初日、懐かしい味を求めて買いに来た地元の人々の姿を見た美子さんは、「たくさんの人が楽しみにしてくれていることを知り、嬉しく思いました」と感謝を述べています。
桑田ミサオの笹餅の魅力
笹餅の魅力は、その味わいだけではありません。
それを通じて育まれる地域の絆もまた、大きな価値を持っています。
桑田ミサオさんは、「笹餅を作ることで、昔ながらの風習や文化を次の世代に伝えたい」と語っていました。
現在では、美子さんがその思いを受け継ぎ、笹餅の製造だけでなく、地域イベントや体験教室にも参加しています。
五所川原市の市民団体「公開講座奥津軽」では、笹餅作りの体験教室を定期的に開催。
子どもたちや観光客が参加し、笹餅作りを通じて津軽の文化に触れています。
「笹餅はただの食べ物ではなく、地域の誇りでもあります。それを作り続けることは、津軽の文化を守ることにつながります」
と美子さんは語ります。
これからの笹餅
美子さんは、笹餅作りをこれからも続けていく意向を示しています。
「まだまだ未熟な部分もありますが、おばあちゃんの味に近づけるよう努力を続けていきたい」と語ります。
週に2回、スーパーストア金木タウンセンター店での販売を継続し、多くの人々に笑顔を届けています。
また、美子さんは新しい挑戦にも意欲を見せています。
「若い世代にも笹餅を楽しんでもらえるよう、新しい味や形にも挑戦していきたい」とのこと。
伝統を守りながらも、現代のニーズに合わせた工夫を取り入れる姿勢は、多くの人々に期待されています。
まとめ
青森・五所川原「笹餅屋」桑田ミサオさん
世間では定年と言われる年齢をゆうに過ぎても元気に仕事を続けている食のプロたちを、全国に追うシリーズ「生涯現役」。75歳で起業した桑田ミサオさんの記事が大反響です。編集部にお電話くださった方も。https://t.co/i6Zz6l5oWj pic.twitter.com/0qdsKdlmaT
— 料理通信 (@team_trippa) October 15, 2022
96歳という長い人生の中で、桑田ミサオさんが遺したものは、笹餅そのものだけでなく、その背景にある情熱や文化そのものです。
「誰かが楽しみにしてくれているから、私は笹餅を作り続けてきた」という彼女の言葉には、仕事への誇りと人々への感謝が込められています。
その精神は、後継者である小嶋美子さんにしっかりと受け継がれています。
そして、地域の人々もまた、笹餅を通じて受け継がれる津軽の文化に感謝し、それを大切に思っています。
これからも、桑田ミサオさんの笹餅の味とその精神は、津軽地方の人々の心に根付いていくことでしょう。
桑田ミサオさんと小嶋美子さんが紡いできた物語は、これからも地域の人々の支えとなり、未来へと受け継がれていきます。
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